【書籍】「残酷すぎる成功法則 9割まちがえる「その常識」を科学する」を読んで。
本当のところ、実社会で成功を生みだす要素はいったい何なのか。
まさに『ザ・自己啓発本』です。その分厚さに圧倒されます。厚さの理由は、とにかくエビデンス重視であること。失礼ながら、一度この本を読んでしまうと、普通の自己啓発本では満足できない体になっていることに気づくでしょう。
キーワードとして、「継続的取引の規律」「限定合理性」「脅威管理理論」「スクルージ効果」「認知的再評価」「WNGF:勝てること(Winnable)・斬新であること(Novel)・目標(Goals)・フィードバック(Feedback)=面白いゲームに含まれる共通要素」「WOOP:願い(Wish)・成果(Outcome)・障害(Obstacle)・計画(Plan)=目標達成に必要な要素」「3つのP:永続性(Permanence)・普遍性(Pervasiveness)・個人度(Personalization)=楽観主義と悲観主義のバランスを取るのに大切な要素」「セルフ・コンパッション(自分への思いやり)」「幸福の測定基準(と幸福に繋がる行動):幸福感(楽しむ)・達成感(目標を達成する)・存在意義(他社の役に立つ)・育成(伝える)=ビッグ・フォー」「コントロール感」あたりは良かったなと思いました。もちろん他にも多くの理論が出てきます。久しぶりに“ふせん紙”を貼った数が多かったです。
また、読み物として、興味深いストーリーが満載です。海軍特殊部隊シールズの特訓を乗り越えたジェームズ・ウォーターズ。天才ピアニストのグレン・グールド。アンデス山脈で遭難し生還したジョー・シンプソン。MITの探査レーダー研究の邪魔になっていたハーバード大学の電波妨害技術の話など。こんなことがあったのかと感心しながら読み進めました。
とにかく、この著者の執念を感じます。巻末の参考文献は33ページにも渡ります(邦訳文献含む)。執念に拍手です。今まで読んできた自己啓発本の内容を真っ向から否定するようなことも書かれています。柔軟な頭を持って、必要なものはきちんと頭を切り替えて活用していきましょう。
【書籍】「 脳が冴える15の習慣 記憶・集中・思考力を高める」を読んで。
脳神経外科、築山節(つきやまたかし)氏の著作。「冴えない脳」を治すため、有効性の高い15個の習慣を提案します。
- 生活の原点を作る ― 脳を活性化させる朝の過ごし方。足・手・口をよく動かそう
- 集中力を高める ― 生活のどこかに「試験を受けている状態」を持とう
- 睡眠の意義 ― 夜は情報を蓄える時間。睡眠中の「整理力」を活用しよう
- 脳の持続力を高める ― 家事こそ「脳トレ」。雑用を積極的にこなそう
- 問題解決力を高める ― 自分を動かす「ルール」と「行動予定表」をつくろう
- 思考の整理 ― 忙しいときほど「机の片付け」を優先させよう
- 注意力を高める ― 意識して目を動かそう。耳から情報を撮ろう
- 記憶力を高める ― 「報告書」「まとめ」「ブログ」を積極的に書こう
- 話す力を高める ― メモや写真などを手がかりにして、長い話を組み立てよう
- 表現を豊かにする ― 「たとえ話」を混ぜながら、相手の身になって話そう
- 脳を健康に保つ食事 ― 脳のためにも、適度な運動と「腹八分目」を心がけよう
- 脳の健康診断 ― 定期的に画像検査を受け、脳の状態をチェックしよう
- 脳の自己管理 ― 「失敗ノート」を書こう。自分の批判者を大切にしよう
- 想像力を高める ― ひらめきは「余計なこと」の中にある。活動をマルチにしよう
- 意欲を高める ― 人を好意的に評価しよう。時にはダメな自分を見せよう番外.高次脳機能ドックの検査 ― 最低限の脳機能を衰えさせていないか確認しよう
加齢とともに衰える脳を活性化するため、行動パターンを見直して、新鮮で刺激のある毎日を送りましょう、という話です。頭を使うだけでなく、手・足・口を使わないといけないですね。本を読むときも、黙読よりは音読のほうが良い。字を書くのも良い。散歩して血液の巡りを良くするのも良い。
それと、時間の制約を設けて、終わらせることに集中こと。眠っている間の脳が記憶を整理するはたらきを活用することも重要。効率的、合理的な行動を意識せずにとれるように訓練したいなと思いました。
自分の話が本当に相手に理解されているかということを常に気にかける姿勢を持って下さい。「自分の話が通じないのは女房が悪い」「話が伝わらないのは上司が悪い」と考えてしまっていないでしょうか? そういう悪い頑固さは、前頭葉の力が落ちて、変化に対応するのが辛くなっているからかも知れません。
年をとるとどうして頑固になるけれど、これは前頭葉のちからが落ちているから、ということだったのですね。ここは意識して、前頭葉を活性化させるよう、少し落ち着いて考えてみることにしましょう。
脳が冴える15の習慣 ―記憶・集中・思考力を高める 生活人新書
- 作者: 築山節
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2012/07/31
- メディア: Kindle版
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【書籍】「こころの価値を売る世界にただひとつだけの会社」を読んで。
2010年の著書です。
大量生産・大量消費時代が終わり、消費の志向がモノからサービス(ココロ)に移り変わった今、国内に根強く残るモノづくり信仰を改め、『ココロビジネス』を展開していく選択肢はいかが、という主旨でした。
働き方の事例として、モーハウス、六花亭製菓、パタゴニア、未来工業、日本理化学工業などが挙げられています。売上至上主義ではなく、自分たちがやりたいこと、やれることを仕事にすることで、ワーク・ライフ・バランスを実現する制度設計と運用ができていることが分かります。
企業活動の目的は利益の追求にあり、利益なくして企業の存続はありえないと理解していますが、そのために従業員を使い捨てにすることや、多様性を誤解し、旧態依然とした企業組織のままでいることは、時代遅れであり持続可能性の低い経営であることを理解しました。
著者は次のように説きます。
- 世の中には、戦うことを志向する肉食系企業と支え合うことを志向する草食系企業がある
- 肉食系社員はお金や出世を追求し、草食系社員はココロの豊かさを追求する
- メガ・コンペティションの時代に生き残るのは、肉食系企業ではなく草食系企業である。
旧来型の肉食系ではない働き方があることを説明しており、その通りと思います。ただ、私なりには、肉食系は肉食系として、草食系は草食系として、それぞれエコシステムの構成要素と理解しており、結局は極端に肉食系や草食系に偏らないようにするのが大事だよね、と理解しております。
若干古い著作ですので、現在IT技術を持ち込んだ時に、草食系企業がどう変化するのか考察してみると面白そうです。
こころの価値を売る世界にただひとつだけの会社 (洋泉社BIZ)
- 作者: 小屋知幸
- 出版社/メーカー: 洋泉社
- 発売日: 2010/02/02
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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【書籍】「あなたの自己回復力を育てる―認知行動療法とレジリエンス」を読んで。
生態系の復元、経済危機からの復活、災害からの復興など、『回復力(レジリエンス)』という言葉が使われます。著者は、認知療法・認知行動療法の立場から、この回復力について丁寧に順を追って説明します。
- 回復力とは何か?
- 態度(回復力の核心)
- 回復力の養成を妨げる態度
- 回復力をさらに高める
- 回復力を支える強さ
- 職場における回復力
- 人間関係における回復力
- 厄介な人に他処するための回復力
- 回復力を維持する
- 回復力についてのまとめ
- 出来事が心を乱すのではなく、その出来事をどう受け取るかによって心が乱れる。
- 思考と感情と行動は密接に関わっている。思考と感情を混同してはいけない。整理するには、自分の考えが硬直しているか柔軟か、現実的か非現実的か、有益か無益か、他の人に教える気があるか、を問う。
- 悲観的な説明スタイルに陥った場合、永続性、全面性、自己関連付けの3つの要素が含まれる。例えば、自分がやらかしたせいで奈落の底に落とされた気分になる、という0 or 100的な思考。極端に振りすぎた状態と言える。
- 人が間違いを繰り返すのは、自分を十分理解できていないからである。
- 疑念が頭をもたげても、それと関わり合わず、ただその存在を認め、心を素通りさせること。これはマインドフルネスと呼ばれる。
本著では、著者によるセラピーのクライアントの事例を紹介しなら、歪んだ認知をどう正常化してきたのかを分かりやすく説明します。
生きていく中で遭遇する様々な事象に対して、自分が変えられるのは自分だけ。影響を与えることはあっても、相手を変えられるなんて思ってはいけません。また、自分を変えるにあたっても、感情に振り回されることなく、事象に対して何を考え、何をしたいのかを冷静に整理する必要があります。
海外ではよくセラピーが活用されていますが、セラピストを含め、他人になかなか心を開いて相談することができず、悩みに悩み続けている人も多いかと思います。そんな時、「回復力」という言葉や整理方法を知っているかどうかで、対処のスピードも効果も大きく変わってくるようです。短い人生、くよくよ悩みながら生きるより、一度すべてを吐き出してリフレッシュすることは大変に重要です。
一歩踏み出してみれば、意外にも他人はそれほど気に留めていないことだらけ。まずは勇気を出して行動してみたいと思わせる、そんな一冊でした。